杏香はじっと黙って俯いていた。

彼女はいつも、こういう時は何も言わない。

でも、ずっとそばにいてくれる。

言葉はないけれど、存在だけでもすごく暖かみがある。

それが、杏香だった。

私はそんな杏香の優しさに何度も救われてきた。


「梨香」


エリカが再び口を開く。


「あたしも杏香も、梨香の味方だからね」

「…うん。ありがとう」


エリカも杏香も、私の話を真剣に聞いてくれていた。

沈んでしまった空気を一掃するために、エリカが明るく切り出す。


「早く食べよう。じゃないと、先生来ちゃうよ」

「…うん!」