教室に戻ると、エリカが待っていた。

おそーい、と言いながらも顔は笑っている。

そんなエリカに、持っていたジュースを渡す。


「ねー」


杏香が躊躇いがちに口を開く。


「順平のこと、どう思う?」

「あんた、カレシのこと疑いすぎ」


あんぱんを口いっぱいに頬張りながら、エリカが言った。


「大体ね、あんなの浮気したくてもできないって」

「どーゆう意味よー」

「だから、あいつにはそんな器用な事できないって話」

「えーそれはひどいよー」

「だって杏香のこと溺愛してんじゃん?」


エリカの言葉に、杏香は閉口した。

でも私も、本当にそうだと思う。

杏香と順平は、誰が見ても本当に仲の良いカップルだ。

そこに誰かが割って入れるような隙間はない。


「あっ、類くんだ」


唐突に、杏香が呟いた。

彼女の視線を追うと、そこには類くんがいた。


「何してんのかな、あんなとこで」

「一緒にいるの誰だろう」

「ああ、篠原じゃん?
なんか一年の時に揉めてたけど、またつるんでんだね」


へぇー…。

類くんでも、誰かと揉めたりするんだ。

喧嘩とか、そんなイメージ全然ないけどなぁ。