結局、杏香は午前中一度も順平と顔を合わせなかった。
お昼くらいは一緒に食べれば、と私とエリカが勧めても、絶対に嫌だと言って聞かなかった。
仕方なく、私たちは三人で食堂へと向かった。
「あ、あたしパン買ってくるね」
そう言ってエリカは私たちを振り返った。
「どれでもいい?」
「うん。じゃあ、私たちはジュース買いに行くね」
「はいはーい。じゃ、教室で」
私たちは二手に分かれて、それぞれパンと自販機の列に並んだ。
自販機のほうは人が少なかったので、すぐに買うことができた。
私たちがジュースを買い終えて、列を離れようとした時だった。
不意に誰かが、杏香の腕を掴んだ。