小泉、と先生が不意に私の名前を呼んだ。

もう、そんなに大きな声で注意しないでよ。

ちゃんと聞いてるっての。

背後では杏香がケタケタと笑う声がしていたけれど、私はそれを無視することにした。


類くんのクラス、一限目は体育だったんだなぁ。

…あ、順平だ。何か喋ってる。

ふと見ると、順平のそばには女の子が立っていた。

浮気現場はっけーん、とふざけた調子で杏香に話しかけようとした時だった。

ガタン、と大きな音を立てて、杏香が立ち上がった。

途端に、全員の視線が杏香に集まる。


「あ…すみません」


杏香は頭を下げると、すぐ席に座った。

後ろを振り向かなくても、彼女がとても動揺しているのだということは察しがついた。