「梨香ーぁ」


私の後ろの席の杏香が、声をかけてきた。


「ほら、あれ見てみ」

「ん?」


杏香は、窓の外のグラウンドを指していた。

…あ、類くん。

あー、やだやだ。私、まだ全然好きだ。

グラウンドに視線を移してから類くんを捉えるまでに、時間は必要なかった。

こんなので、諦められるわけないのに。

…っていうか、諦めないけど。