「え…?」

「好きでいるだけでいい。そんなの建前。
人間、誰にだって欲はあるものなの」

「欲って…」

「そのうち梨香、きっと我慢できなくなる。
佐藤くんに、自分を好きになってほしいって、思うようになるの」

「そっ、そんなことないもん。
私は本当に、類くんを見てられれば、それだけで充分なの」


私がそう言うと、エリカは大きなため息をついた。

それから「そのうち分かるよ」と言って、それ以上は何も言わなかった。