杏香と順平もどうやら話が済んだらしく、順平は類くんと一緒に教室へと帰っていった。

途端に、杏香が私を小突く。


「ちょっと梨香ちゃぁーん?」

「何…??」

「分かってるくせに。
ていうか何で、あそこであの話持ってくるわけ?
梨香、あんたバカ?」

「だって…他の話題とか思いつかなくて」

「あるでしょ、何でもさー。
好きな物とか訊くのでもいーじゃん」

「でも、そんなの不自然じゃん。
好きってバレちゃうよ!」

「何、バレちゃだめなの?諦めるの?」

「諦めるなんて、そんな——」

「あんたねえ」


不意に、すぐ近くでエリカの声がした。


「恋って、そんな甘くないよ」