だって、忘れられないんだよ?
好きで好きで好きで好きで……好きすぎて仕方ないから忘れられないんでしょ?
忘れようと思っても忘れられないくらい好きって事でしょ?
そんなに好きな人がいて、思い出になんかできる訳ないじゃない。
頑張りぬいたって、思い出になんかできる訳ないじゃない。
満足なんかできる訳ないじゃない。
この想いは……きっとどんなに頑張りぬいたって足りないもん。
頑張ったって頑張ったって、まだまだ足りない。
足りないよ――――……
樹を目の前にして、あたしの気持ちがまた大きくなる。
それはもう自分で止められるようなものじゃなくて。
溢れ出す気持ちをそのまま言葉にしようとした時、樹が少し苛立った様子で口を開いた。
「そんな事言ってんじゃねぇよ」
その言葉に、あたしは樹を見つめる。
すると、樹も真剣な瞳であたしを捕らえて……続く言葉を口にする。
「オレが言いたいのはそんな事じゃねぇよ。
勘弁しろって言うのは……マグネットとか、おまえに関係するモン見る度におまえの事ばっかり思い出したりとか、ベッドで寝ると背中が寒く感じたりとか……
挙句にあんな言葉……パソコンにあんな言葉残されて……そんな事されたら気になって仕方ねぇだろぉがっ」
「……―――― 」
樹がくしゃくしゃ、と髪に手をさす。
少し不貞腐れたような顔に、あたしの胸がドクン、と大きく鳴った。
そして、樹はおもむろにポケットに手を突っ込むと……
「……コレ」
「え……あ、」
あたしがモールで買った林檎うさぎのキーホルダーを差し出した。
家に帰って探しても見つからなかったキーホルダー。
てっきり道にでも落としたと思っていたキーホルダーを、樹があたしの目の前で揺らして……手の中へと落とした。
鍵につけられたキーホルダーを。
「……これ」
「言ったじゃん。……瑞希が出てってから毎日背中が寒くて仕方ないって。
……責任取れよ。おまえのせいなんだから」
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