そして、少し言い難そうに口を開く。


「おまえさ、勘弁してくんない?」

「……え、何?」


意味の分からない文句を言われて、あたしは聞き返す。

たった、4文字の言葉を声にしただけなのに、身体が小さく震えていた。


樹は返された言葉に、後ろ頭をかいて……少し黙ってからぼそぼそと話し出す。


「冷蔵庫のマグネットとかさぁ……あと、風呂場に置きっぱなしになってるシャンプーだとか……

あぁ、あと、食べ掛けにしたポッキーだとか、メダルに貼ったキラキラしたシールだとか……」

「……」


ただの文句に、あたしの期待した気持ちが打ちひしがれる。

何かと思ってまたしても期待してしまった気持ち。

しぼむこと、本日2回目。


「……捨てていいよ」


せっかく会いに来てくれたのかと思ったのに、樹の口から出てきたのは文句だけで。

あたしは口を尖らせて答える。


あたしは目の前に樹がいる事が嬉しいのに。

それなのに、樹はそんな事ちっとも感じていないみたいで……まるで違っている気持ちに、落ち込むばかりだった。


こんなんで告白したって……一体何になるんだろう。

しまいにはそんな事まで考えてしまって。

頑張りぬけば綺麗な思い出になるって思ってたのに、もう既に打ち砕かれてしまったような気分だった。


キラキラするハズだった恋が、どんどん悲しいモノになってしまう。

……このまま頑張りぬいたって……あたしはきっと樹を思い出になんかできないよ。


思い出の1つとして、胸になんかしまえない。


『忘れられない恋』って、キラキラしてるものなの?

忘れられなくても、頑張りぬけたらキラキラするの?

思い出に出来るの?

次に進めるの?




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