効果音では表現できないほどの爆音。
重低音って、確か言ってた気がするけど……この、お腹にくるような響く音は――――……
校門を出る生徒の視線が、校門左にある壁の向こうへと集まる。
それは、きっとこの爆音を作り出す車に向けられているからで……
……違うよ。
まさか、そんな訳ない。
樹のあの車のハズがない。
絶対に、違う。
そんな事を何度も頭で繰り返しながら、あたしは少し震える脚を校門へと進める。
ドクドクと鳴り響く心臓が脚を何度も止めようとして煩わしい。
樹じゃないのに……
樹のハズがないのに……
その正体を早くこの目で確かめたくて……あたしは言う事を聞かない脚を必死に前へと進める。
もつれそうになる脚を一歩一歩前に出す。
そして――――……
やっと校門を出たあたしの目に飛び込んできたのは……
「アウトだな」
「えー!! だって車検は通ってるんですけど」
「闇車検だろ? とにかく違反だ」
シルバーのセダンと、白バイ。
音が違反だったのか、それとも原因は別にあるのか……取り締まりの真っ只中だった。
その光景に……あたしを急かしていた心臓がしょげていく。
いつの間にか膨れきっていた胸の期待がしぼんでいくのを感じながら、あたしは視線を地面へと移した。
……一体、何を期待してたんだろう。
樹があたしに会いに来てくれるなんて、そんな訳がないのに。
もしも少しでも気持ちがあったなら、『オレの事好きになるなよ』なんて、あんな約束持ち出したりしないのに。
本当に、バカだ……
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