だって、まだ何もしてないもん。

この恋は……まだ、現在進行形だから。


『「忘れられない恋をした事がありますか」って、忘れられなかったら現在進行形のはずだろ』


樹が言ったんだもん。

忘れられないなら、それは「今」だって。


だから、あの3日間は幻なんかじゃない。

まだ、思い出でもない。




ねぇ、樹。

約束破った事、怒ってる?

謝りもしなかったあたしを、樹は怒ってるかな?

それとも、呆れてる?



しょうがねぇ奴だなって、呆れてる?



ねぇ、笑ってもいいから。

『おまえオレに惚れてる訳?』ってからかってもいいから。


だから……

もう一度だけ、話しに行ってもいい?


頑張りに行ってもいい?


本当は恐いけど、でも、どうしても、後悔だけは残したくない。

樹との3日間に、くすんだ想いを残したくないんだ。


あの3日間は、あたしの中でとびきりキラキラしてるから。

その想いを汚したくない。



樹への想いは、樹にちゃんと届けたい。

初めて感じた、恋する気持ちを……ちゃんとやり遂げたい。



そうしたら、いつか……きれいな思い出になる気がするから。


「忘れられない恋」としてじゃなくて。

「忘れたくない恋」として。



一生、宝物にできるようなキラキラした思い出になると思うから。

……樹のメダルみたいに。



「それにしてもいい天気だねぇ」


背伸びをする芽衣に、あたしも視線を外へと移す。

だらけて溶け出しそうだった身体をしっかり伸ばす。

深呼吸をすると、まだ冷たい空気が身体中を巡って……あたしの気持ちをしゃんとさせた。


「そうだね」


見上げる空に、雲が浮かぶ。

青と白の世界を見つめながら、もう一度深呼吸して気合を入れ直した。


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