……まぁ、文句ばっかり言ってても仕方ない。

とりあえず泊まる所探さなくちゃ……

でもお金ないし。

援交なんて絶対嫌だし……



そんな事を考えてた時だった。

軽快な笑い声があたしの耳に飛び込んできたのは。


「おまえ……すげぇ度胸だな」


くっくっ、と喉に笑いを含んだ為に途絶え気味になった声で隣から話しかけてきた男に視線を移す。


白いシャツにカーキのブルゾン。

下はブラックデニムで、足元はブーツにも見える革靴。


服装は普通だけど、目を引くのはその人の顔。

美形ってほどじゃないけど、それなりに整った顔立ち。

少し冷たそうに見える瞳も、ニヒルな笑みを浮かべる口元も……あたしのタイプど真ん中だった。


「……女は度胸だって育てられたんで」

「まぁ、度胸の良さは認めてやるけど……普通に危ないだろ。

殴られたりしたらどうするつもりだよ。

おまえなんか、男なら簡単に連れ去る事だってできんだから気をつけ……」

「あー……別にいいです」


なんだか説教くさくなってきた言葉を遮ると、隣の男が眉を潜める。


「おまえさぁ、見ず知らずのオレがせっかくこうやって注意を……」

「だからいいってば。

……あたしもうダメだし」

「ダメって……なにがだよ」

「もういいんだってば」


なんかもう話すのも面倒くさい。


さっき降り出したばかりの雨は強くなってきてるし、真冬の2月にあたしはこんなトコにいるしかないなんて……

もうやだ。泣きそうだよ。


大きなため息をつくと、隣の男が少し気まずそうに話しかけてきた。

気まずそうっていうか……なんか面倒くせぇなって感じに近い。


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