人生なんて七転び八起きだとかよく言うけど。
一体何処の誰が言い出したんだかぜひとも教えて欲しい。
どんなに転んでも、それ以上に起き上がれる事が本当に保証されてるなら……
あたしはきっとこんなに落ちてないのに。
片桐 瑞希。
今日は誰がなんと言おうがあたしにとって最悪な日だ。
まず占いが最悪だった。
『今日一番悪い運勢なのは~……おひつじ座のあなた!』
おひつじ座の人の事なんかどうでもいいほどに明るく突き抜けた女子アナの声。
なにが『ラッキーアイテムはレインコート!』だよ。
こんな晴れ渡った日にレインコートなんか持ってく訳ないじゃん。
……まぁ、そんな事はいいんだ。
最悪なのは……
最悪なのは――――……
今日の出来事を頭の中で繰り返し、もう一度どっぷりと落ち込んでいると、ぽつりと頭に落ちてきた水滴に気付いた。
落としていた視線を前に移せば、そこには忙しく行きかう人達の姿。
17時、駅前のロータリー。
……そして足元には1泊にしては少し大きすぎる荷物。
チラチラとあたしに向けられるサラリーマンの視線。
そのサラリーマン達にはきっと家出少女とでも思われてるんだろうな。
……実際そうなんだけど。
『瑞希、オレな……』
頭の中に蘇る声に、頭をぶんぶんと横に降ると、空からまた一滴。
……最悪な日は、本当にどこまでも最悪だ。
さっきまで晴れ渡っていたはずの空からは、どうやら雨が降り出してるし、傘なんか持ってきてないし。
ましてやレインコートなんか……あぁ、レインコートね。
そうゆう事か。
信じなかったあたしが悪いんですか。
大きなため息が雨によって地面に落とされた時、ふいに目の前に影が落ちた。
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