私が冷静に教えると、愛来は顔を真っ青にして自分の席へと戻ってしまった。


愛来と話していると、凄く楽しい。


私の顔も自然にほころぶ。



そして運命のいたずらか、愛来が席についた時に授業開始のチャイムが鳴った。


「ええっ、待って!」


愛来がリュックを引っ掻き回しながら笑いを誘う。


皆が笑っている。


タイミング良く教室に入って来た先生まで笑っている。



クラスの人気者の愛来は、皆から気に入られている。


クラスの雰囲気が一瞬で明るく、楽しく変化した。



そして、放課後。


私は途中まで愛来と帰っていた。


「じゃあね!」


「ばいばい、愛来!」


2人で手を振って別れ、私は家へと続く道を歩いていった。


なるべく雪を見ないようにしながら歩いていると。


そばの電信柱に手をつき、苦しそうに呼吸をしている男子がいるのに気がついた。


(あの赤いリュックって…)


「斎藤君…?」


その声に驚いたように振り返る彼は、紛れもなく斎藤君だった。


「どうしたの?」


「誰…?」


質問が返され、私は今日1日斎藤君と会話をしていないことを思い出した。


「私は斎藤君と同じクラスの川本 美空。…どうしたの?」


「いや、ちょっと身体がだるくて…今日保健室行ったんだけどな…」


頭を軽く押さえながらそう言う斎藤君。