その言葉に心動かされた私は、ゆっくりと目を開けて下を見下ろした。


泣いてもいいのなら。


そう思って、開き直ってみたけれど。



雪が降り積もっていく。


その光景は、たちまちあの日の景色へとフラッシュバックする。



赤く染まった雪。


その中心で至る所から血を流して倒れる、私の妹。


助けられなかった。


私が、悪いのに。


出来る限りの事をしたのに。


それなのに。


「嫌っ…嫌だ……」


とてつもない苦しみと悲しみが、私の心を支配する。


思わず、陸人の腕を力一杯握ってしまう。


首を振って抵抗しても無駄で。


陸人は私の顔をがっちりと押さえ、左右に動かないようにしていた。


「駄目だ、川本」


「見たくない!嫌…ねえ嫌だ!」


力で陸人に叶わないと分かった私は、自分の手の甲を引っ掻いた。


そうでもしないと、この苦しみから解放されないと思った。


“痛い”の域を超えた私の引っ掻きは、手の甲の皮膚を突き破る。


もう、痛さなんて感じない。


それ以上に、苦しいから。


そして、血が流れる感覚がした。


「ちゃんと雪を見ろ!」


陸人に急に大きな声を出されてたじろいだ私は、窓ガラス越しにうっすら見える陸人を見つめた。