もうすぐで大通りに出る。


私に手を引かれながら傘をくるくると回していた美花が、誘惑に耐えきれず、雪に触れようと手を伸ばした。


その時、どこからともなく強い風が吹いてきて、美花の傘をさらった。


「私、取ってくるよ」


「うん、ごめんね」


走って傘を取りに行った私が、ちょうど傘を掴んだその時。



「美空、危ない!」


美花の叫び声と、辺り一面に響いた車のクラクションの音が同時に聞こえた。



我に返った私は、誰かに抱かれて雪の上に倒れていた。


身体の節々が痛い。


それに、出血もしている。


あまりの痛さに起き上がることもできない私は、とにかく自分に覆いかぶさる人の体を押した。



横向きの姿勢からゆっくりと仰向けに倒れるその人は、紛れも無く私の妹。


(何、何?)


「美花…どうしたの…?」


あまりのショックに、息が止まった。


美花が今何をしているのか、何故私の上に被さっていたのか、全てが分からない。


いや、分かりたくなかった。


私の脳は完全に思考を停止し、真実を受け止められずにいた。


天を仰ぎながら苦しそうに息をする美花は、私の呼びかけに応えない。


ただただ、妹の頭と足から流れる血が真っ白な雪を赤く染めていくだけだ。


私の体のどこかから流れる血も混じって。