今まで、幸せを忘れていた。


美花と過ごした過去に囚われて、私の中の時計は完全に動きを止めた。


けれど、斎藤君が私を変えてくれた。


もしもあの日に何も無かったら。


愛来や陸人、隼人君が私の心の叫びに耳を傾けてくれなかったら。


私はずっと疑心暗鬼に陥り、笑えず、雪を見たら倒れ、感情は凍結したままだっただろう。


斎藤君が、花言葉の分かる陸人と共に花を買いに行かなかったら。


斎藤君が、ニゲラの花束をくれなかったら。


私は肉体を貰った美花に、会うことが出来なかっただろう。


お父さんに、“幸せとは何か?”という課題を与えられなかったら。


私は、これ程真剣に幸せについて考えなかっただろう。


美花が、“2人で1つ”という言葉を残してくれなかったら。


私はいつまでも、自分を責め続けていただろう。


美花が私の為に手紙を残してくれなかったら。


私は、美花と会った事を夢だと信じ続けていただろう。



今でも、雪を直視するのは怖い。


けれど、前の様な症状が起きていない事は明らかだ。


これらは全て、私の仲間と大好きな双子の妹のおかげ。


これから先、私は笑う事を忘れない。


私が幸せになって、美花が幸せになる為に。



私達は、2人で1つ。


美花は、私の心の中で生き続けているのだから。