いつの間にか、陸人と斎藤君は声のトーンを落とし、小声で話し込んでいた。


「美空がっ……美空になった…」


何を言っているのかさっぱり分からない。


「愛来、私は前から私だよ…?」


「そうだけど、違うのっ!」


(え…?)


意味が分からずに首を傾げる私を見て、呆れたように陸人が口を開いた。


「川本が、今までと違うってことだろ」


「今までって?」


私が陸人を見ると、何故か斎藤君が答えてくれた。


「川本が、前みたいに戻ったんじゃない?」


「前って、いつ?」


だからさー、と陸人がペン回しをしながら口を開ける。


「川本の妹が事故に遭う前の川本に、戻ったんじゃねえの!?」


今解いている問題が解けないのか、陸人は語気を強めにしてイライラを出した後、


「あっ、いけるわ」


と、瞬く間に式を導き出していった。



「え、そうなの?」


と愛来を見ると、


「うん、美空が戻ったー!」


と、愛来はむせび泣きながら頷いた。


「美空、笑えてるっ…!この前と全然違うよっ…!」


愛来は再び私を抱きしめ、おいおいと声を張り上げて泣き始めた。


「…待って、一旦落ち着こう?他のクラスメイト来たら…」


「…うん」


私にみなまで言わせず、愛来は頷いて目の周りを擦った。