その時。


ガラガラとドアの開く音がし、


「失礼します……」


と、男子の声がした。


(誰だろう?)


私は閉じていた目を開け、そっとカーテンの隙間からその男子の姿を見た。


それは、斎藤君で。


(私がここに居るって、知られたくない)


知られたら、何故ここにいるのか聞かれてしまう。


皆と違う理由でここに来ている私は、そんな質問に何て答えればいいのか分からないから。


私は、苦しさに耐え切れずに下を向いた。


「あら、あなたは…」


中村先生の困惑したような声が聞こえる。


「今日転入してきました、斎藤 翔平です」


(斎藤君…)


私は目を開け、緊張で毛布を握りしめた。


私が寝ていることは、知られたくなかった。


それについて、質問をされたくない。



「斎藤君ね。どうしたの?」


「少し、頭が痛くて…」


少しだけ開いているカーテンの隙間から、斎藤君が頭を押さえているのが見えた。


少しどころではなく、本当に痛そうだ。


その後少しして、体温計の鳴る音が聞こえた。


「37.2…微熱ね。転入ってこともあって、少し疲れちゃったのかも…ベッドで休む?」


「もっと具合が悪くなったら休みます…でも、授業はちょっと…」


斎藤君の声が、保健室に響く。