「私のコートどこ!?」


私は叫ぶ。


「お前のそこだろ!」


陸人が私のコートを掴み、投げる。


「ねえ、マフラーは!?」


それをキャッチした私は再び尋ねる。


「俺が持ったよ、早く出ろ!」


陸人が私のマフラーを振る。


「ねえ、何でこんなに急ぐの?」


この期に及んで、斎藤君はまだのんきに質問をしている。


「説明は後だ。…誰か電気消したか!?」


陸人が斎藤君の手を引っ張り、廊下に出させる。


「あー!私のリュック、体育館の外!」


愛来が悲痛な呻き声をあげる。


「早く取りに行って!」


私は電気を消しながら言う。


「ちょっと、押すなよ!」


斎藤君が文句をたらす。


「あー、上履き踏んだの誰!?」


愛来が陸人を押し退けながら怒る。


「そんなのどうだっていいから、早くリュック取りに行けよ!」


陸人が地団駄を踏む。


「見つかったら、陸人の事もチクってやるから」


どうやら上履きを踏んだ犯人が陸人だった様で、愛来はドスの効いた声を出し、風のように走り去った。


「あーもう、ごめんって!」


陸人が謝った時には時すでに遅し。


愛来の後ろ姿はもう見えなくなっていた。


そして愛来と別れた私達3人は、今度は無言で廊下を進んで行った。


部活が終わったばかりの為、いつどこで先生達と出くわすかは分からない。