1度心に出来た傷は、そう簡単に取り除く事が出来ない。


ここに居る4人は、それぞれが何かの理由で苦しんでいる。


それが言葉として残っている場合もあれば、いつも隣で歩んできた大切な人の死かもしれない。


生まれつきの疾患の場合もあれば、家族関係のいざこざかもしれない。


自分に秘められたある能力で苦しんでいる場合もあれば、自分の家族の事をその人以上に考え、苦しんでいるのかもしれない。


その古傷は、何かのタイミングで傷口が開く時がある。


例えば、雪を見たら。


例えば、“入院”という単語を口にしたら。


例えば、父親の事を考えたら。


例えば、溢れる記憶を制御出来なくなったら。



私は、美花が亡くなったのは自分のせいだと思い込み、ずっと自分を責め、生きる意味が分からなくなった。


愛来は、自分の兄の隼人君の事を誰よりも心から心配し、そして苦しんでいる。


斎藤君は、父親に言われた言葉に縛り付けられ、自分の身体を恨み、そして自分を責め続けている。


陸人は、自分に備わった驚異的な記憶能力、ギフテッドを恐れ、記憶を制御出来ずに1人で辛い思いをしている。


本音を言うのが怖かった。


誰も分かってくれないと信じていた。


けれど、私の気持ちに寄り添ってくれる人は居て。


それと同じ様に、斎藤君の気持ちが伝わる人は、必ず現れる。