(私も、もう苦しまなくていいんだよね…)


無意識にそんな事を考えていると、


「美空も、もう苦しまなくていいんだよ」


と、愛来が再び私のそばにやって来た。


まるで私の考えが全て伝わったようで。


驚いて愛来を見ると、


「美空も本音、言えたんだよ?っ…良かったぁ…」


と、笑いながら涙を零していた。


その涙は、まるで雨の雫が地面に落ちるようにゆっくりと頬を伝う。



私の目も潤みかける。


「愛来も言ってね」


そう言うと、愛来が


“今、何て…?”


と言いたげな顔を向けてきた。


私は男子に聞かれない様、愛来の耳元で囁く。


「困ってたり、悩んでる事あったら、聞くから」


その途端、愛来が両手を顔に埋めた。


私よりも5cm程背が低い愛来の肩が小刻みに揺れ、そして無言で何度も何度も頷く。


それだけで、十分だった。



「俺、肺が弱くて、皆に迷惑をかけてたけど…俺自身は『要らない子』じゃ、無かったの…?」


斎藤君は未だに信じられないような顔をしている。


「迷惑かけたって何したって、斎藤君自身は要らなくなんてないよ」


もう一度、ちゃんと斎藤君に届くように私は語りかける。