「川本だって、自分の過去の事を気づかれて欲しくなくてずっと隠してた。でも、結局言える様になってる」


「…結構、頑張ったんだよ」


陸人は私を見て、そうだな、と微笑んだ。


「あと、橘は…」


陸人も隼人君の事は知っている。


けれど、これ以上知られたくない愛来は、ありったけの力を込めて陸人を睨んだ。


無言でも、“言わないで!”と切に願う愛来の気持ちが伝わったのか、陸人は


「あー、いや、橘は何でもなかったかも」


と分かりやすく言葉を濁した。


斎藤君が首を傾げるが、陸人はそれを無視し、言葉を続ける。


「まあ、中には俺みたいに、傷をえぐられてまでして掘り返して欲しくないって人も居るけど」


そして、かなりの間が空いた。


陸人はぎゅっと目を瞑り、息を吐いた。


斎藤君は、陸人の次の言葉を待っている。


「………きちんと言うの、結構俺も辛いけど…でも、今度話すよ」



私は、陸人の言葉に耳を疑った。


あれ程、自分の能力について話されるのも話すのも拒んでいた陸人。


そして、必要な時にしかその話題を持ち出さなかったギフテッドの事。


その話題を、何となくではなく自分の知っている範囲の全てを話すなんて。


陸人にとっては相当な勇気のいる決断だろう。