そんな時、と斎藤君は言いながら目をこする。


「転校することが決まって…正直、凄く怖かった…こんな身体だから、アメリカでは学校にろくに行けてなくて…友達が、居なかった…」


「友達が、居ない…?」


愛来が信じられないといった顔をする。


斎藤君は頷いた。


「だから、友達ってどういうものか分からなかったんだ…日本の学校に馴染めるか不安だったけど、何より、友達を作ってみたかった」


陸人はボタンを掴む手を緩め、斎藤君を正面から見据える。


「けど、すぐに友達が出来て…本当に、凄く嬉しかった」


それが陸人だよ、と斎藤君は泣きそうな頬笑みを浮かべる。


「でも…俺は『要らない子』だからって考えると、いつか友達…いや、親友じゃなくなるんじゃないかって、凄く怖くなって」


陸人は頭を掻く。


「そんな事、ねえよ」


斎藤君は目を見張る。


「いや、まあ…」


真剣に話す事に慣れていないせいか、陸人はもどかしそうに頭を掻き、黒い髪の毛を引っ張る。


「何ていうかさ、その…多分、誰だって、言いづらいけど聞いてもらいたい悩みって、あると思うんだ」


愛来が私の手を握り締めてくれる。


まるで、


『私が居るからね』


と、伝えている様だった。


私もその手を握り返す。