それで、心が軽くなるのなら。


ある言葉に縛られ、苦しめられずに済むのなら。



「自分を責めないと、生きている意味が無くなっちゃいそうで…」


斎藤君の言葉を聞きながら、私も考える。


心に大きなヒビが入ると、自分の存在意義すら分からなくなることがある。


何で生まれたのか、生かされたのか、そして、まだ生きているのか。


自分を責め、そして兄弟を責め、最終的には親を責める。


けれど、誰も選んでいない。


性別も、性格も、身長の高さも、そして、運命も。


自分が死ぬ時だって、誰も選んでいない。


これぞ、神のみぞ知る事。



私は、今考えた事を1字1句漏らさぬように言葉にする。


斎藤君の顔つきが、みるみるうちに変化していくのが分かる。


「ずっと、何でこんな身体に生まれたのかって自分を責め続けて、責め続けたけど答えは見つからなくて」


斎藤君は何かを押し込めるような、苦しげな表情を見せる。


光の反射なのか、斎藤君の瞳の色が変わった。


その瞳は、見る人の目を奪うような、美しい金色に染まっていて。


「ずっと、誰かに言いたかった……」


斎藤君の目には光るものがあった。


「父親に、嫌われて…家族は、何も分かってくれなくて…体調だって、ずっと悪かった…」