あんなにチャラくて、明るい陸人が影では苦しんでいるなんて、前の私や愛来は想像出来なかった。


人前では明るく振舞っているのに、1人になると思い詰めたような表情をする陸人は、まるで昔の私を見ている様で。



いつの間にか愛来が立ち上がり、私の横にぴったりとくっついている。


「でも、あの時の事は鮮明に覚えてる」


斎藤君の顔に影がさす。


「ずっと…自分は要らない子なんだって、思い込んで…」


「そんな…」


愛来が1歩前に踏み出す。


けれど、斎藤君は愛来を受け付けなかった。


「俺は…!」


そこまで聞き、ずっと不満そうな顔をしていた陸人の表情が目まぐるしく変化した。

苦しそうな顔から優しそうな顔。

そして、慰めるような、いたわる様な顔。



「俺は…自分を責め続けないといけなかった…」


「…何で?」


陸人がブレザーのボタンを付け外ししながら尋ねる。


まだあのことを根に持っているのか、表情とは別で口調は棒読みだ。


「多分、そうしないと自分が壊れちゃう、って思ったからだと思う」


斎藤君の代わりに、私が口を開いた。


自分でも驚いた。


まるで、私ではない誰かが私の口を使ったかの様で。


けれど、私には分かる。


ついさっきまで、そうだったのだから。


斎藤君が上手く言葉に表せないのなら、私が伝えればいい。