けれど、その言葉を聞いた途端に、陸人の顔は明らかにこわばった。


愛来を見ると、見事に90°近く首を傾げている。


「知らない…」


私も愛来も、英語には弱かった。


けれど、ギフテッドである陸人は英語にも強い。


「…俺を舐めるなよ、『記憶は消えない』って意味だろ」


斎藤君は嬉しそうに何度も頷く。


「流石!陸人、英語もバッチリだね」


褒められたのにも関わらず、陸人の顔はこわばったままだった。


「まるで…俺の事じゃん。何で聞いたんだよ…」


自分の並外れた記憶能力をコンプレックスに感じている陸人にとっては、周りからちやほやされる事も快く感じていない。



「…俺、陸人みたいにそんな能力ある訳じゃないけど」


陸人はふんと鼻を鳴らした。


「一生かかっても分かんねえだろ」


「うん、多分。俺は何でそんないい能力が嫌に思ってるのかも、覚えてられるっていうのが何で辛いのかなって思う」


開き直った様にそう言い切る斎藤君。


彼は、笑っていた。


「…」


「多分、陸人が俺にその事を話してくれるのって、もっともっと先の事だと思うんだ」


目を伏せる陸人。