だけど、きっと私なら。


同じ様に、そして斎藤君よりも長い1年間も苦しんだのだから。


きっと、分かり合える。


自分の苦しみは未だに全てが治った訳では無いけれど。


彼が私にしてくれた様に、しっかり目を見て向き合えば、きっと。


その苦しみは、溶けて無くなるはずだから。



「斎藤君」


私の静かな声に、斎藤君が驚いた様な顔をする。


「自分を、責めちゃ駄目。…でしょ?」


斎藤君は、はっと目を見開く。


「斎藤君、私に言ってくれたよね。『きっと、分かり合える』って」


斎藤君は石像のように固まったまま動こうとしない。


目の端に捉えた陸人は、まるで


“その調子”


とでもいう風に大きく頷いていた。


「まだ、17:30だよ。最終下校時刻は45分だから…」


その先に言おうとした言葉は、きっと斎藤君に届いているはず。


(あと15分もあるから、話してみて。気が楽になるから)



「っ…………ねえ、陸人」


「ん!?」


突然話し掛けられた陸人は、驚きのあまりロッカーから落ちそうになった。


そんな陸人を見て、斎藤君は笑う。


「『memories never die』って、意味分かる?」


斎藤君の流ちょうな英語。


これを聞いたクラスの女子なら、誰もが目をハートにさせるだろう。