陸人は後ろの黒板に頭をもたせかけ、黙って耳を傾けている。


「俺を見て、言ったんだ。…『お前のせいでこうなった、お前は要らない子だ』……って」



愛来の息を呑む音が聞こえた。


「『要らない子』って…酷い…」


「うん…」


私は立ち上がって頷く。


親として、家族として、絶対に言ってはいけない言葉。


「それは流石に…」


陸人も、有り得ないといった表情をしている。


斎藤君は泣きそうな笑みを浮かべた。


「その後、お母さんからも兄弟からも慰めれたけど……元々アメリカに住んでたのだって、俺の肺が弱くてその治療と療養の為だったし」


そこで言葉を切る。


「やっぱり、迷惑だったんだな…って、思ってた」


「そんな事…」


(無いと思う)


そこまで、言える勇気が無かった。


何故なら、私も先程まで今の斎藤君と同じだったから。


生きている価値を見い出せず、ずっと自分のことを責め続けていたから。


あんなに慰められたし、沢山泣いたけれど。


今もまだ全てが元には戻っていない。


斎藤君が転入してきた時に、


“私と同じ”


と思った理由は、きっとこの事。


ずっと孤独を味わって、嫌という程苦しんで。


きっと、斎藤君は転入して来たばかりだから、余計にストレスが溜まっていたのではないか。