斎藤君はくっくっと笑った。


そこで、私は気が付いた。


この前メガリ達が言っていた、体育の最中に斎藤君が急に倒れ込んだという、あの話。


あれはきっと、元々弱い斎藤君の肺が限界を迎えたからだという事に。


体育で行うスポーツによっては、肺が弱い斎藤君にとって大変なはず。


バスケットボールは、休む間も無い程ボールを追って走り回るスポーツだ。


きっと、早い段階で斎藤君の肺は疲れ果てていたはずだ。


けれど、斎藤君は皆に迷惑を掛けたくなかったから。


転入して日にちが浅いから、皆とスポーツを通して仲良くなりたくて。


だから、既に限界を迎えて悲鳴をあげる肺をそのままに、試合を続けた。


上手く呼吸が出来なくなっても、痛む胸を押さえるだけで。


精一杯楽しんだ時には、それなりの代償がつく。


だから、斎藤君は倒れ込んでしまったんだ。



「俺、入院するのに、めっちゃお金がかかるなんて知らなくてさ……俺の家3人兄弟だから、大変だったんだろうな」


愛来はいつの間にか顔を上げ、食い入るように斎藤君の話を聞き続けていた。


「父親が家を出てったの、去年なんだ」


斎藤君は苦虫を噛み潰したような顔をして、下唇を強く噛む。


「俺がようやく退院した時でさ…家に帰ったら、父親が家を出ていきかけてて…」