「ふーん…それで?」


そう言ったのは、陸人。


1番シンプルで、簡単な言葉。


「そう言うと思った」


斎藤君は苦笑して言葉を続けた。


「で、その離婚の原因を作ったのが、俺」



(え、嘘…)


今度こそ、言葉が出なかった。


さすがに陸斗もこれには言葉を失い、斎藤君と目を合わせようとしない。


斎藤君はふっと笑う。


「俺さ…小さい時から肺が弱くて、しかも身体も弱かったから、小さい頃は入院ばっかりしてたんだよね」


“入院”という言葉に、愛来の肩がビクンと跳ねる。


愛来は、自分の兄の隼人君が怪我で入院しているからか、“入院”という言葉に酷く敏感に反応してしまう。


「愛来、大丈夫だよ」


「うん…」


愛来の体が小刻みに震えている。


「隼人君の事じゃないから」


「うん…」


私は俯く愛来を抱き寄せ、その背中を軽くさすった。


斎藤君は話し続ける。


「少し運動しただけで酸欠になって、過呼吸起こして、呼吸困難になって…だから救急車と病院の常連だった」


今の斎藤君からは想像もつかないような話。


けれど、斎藤君の表情を見ると、嘘をついていない事は明らかだった。


「…マジで、言ってんのかよ…」


陸人が恐る恐る口を開く。


「そんなに引くなよ、本当の事だよ」