「一応、友達として聞いてもらいたくてさ…どう感じるかはお前次第だけど」


硬かった雰囲気が、ふっと和らいだ。


「分かった、聞くよ」


陸人はスクールバッグをドスンと机の上に置き、自分は後ろのロッカーの上に座った。


チャラい性格が、ここでも溢れ出ている。


「私は…聞いててもいいの?」


今まで泣き続けていた愛来が、顔を上げて質問する。


「あー…うん、いいよ。別に橘なら大丈夫」


斎藤君が少し考えた後に答える。


「ふーん…『別に』ね…」


愛来は納得いかないような顔をして、すぐに頬を伝う涙を拭った。


そんな愛来を、私は再び抱きしめた。



「…俺が、何でアメリカから日本に越してきたか、知ってる?」


しばしの沈黙の後、斎藤君が話し出した。


「仕事の都合でしょ?」


私は斎藤君の顔が見える位置に体をずらして答えを言う。


「皆にはそう言ってるけど、本当は…親の離婚が原因なんだ」


突然明かされた事実に、私は何を言っていいのか分からずに戸惑った。


“そうだったんだ、辛かったね”

“そうなんだ、仕方ないよね”


慰めの言葉全てが、似合わない気がする。