貰い泣きなのか、それとも思い出したのか。


それも分からないほど、私達は泣いた。


お互い固く抱きしめ合い、背中をさする。



泣きながら顔を上げると、陸人が目元を擦っていた。


貰い泣きだろうか。


それとも、ほかの理由だろうか。


とにかく、陸人は私に気付くと後ろを向いてしまった。


「…俺、帰るわ…斎藤、先帰ってるよ」


後ろを向いたままで陸人が斎藤君に声をかける。


「…」


「…じゃあな」


落としたままのスクールバッグを引っ掴み、そのままドアを開けかけた陸人の後ろ姿に向かって、


「待って!」


そう斎藤君が呼び止めた。


それは、どこか切羽詰まっているようで。


けれど、どこか覚悟を決めた様な雰囲気があって。



陸人はそのままの姿勢で動かない。


「何だよ…」


「俺さ、川本と約束したんだ」


(私と?何を?)


私は疑問に思う。


斎藤君に背を向けた状態で座っている為、私には斎藤君の表情が見えない。


「川本が話してくれたら、俺も、話すって」


緊迫した雰囲気の中、陸人が振り向く。


「何を?」


少しの間が空いた。


「…俺も、隠してる事、あって…川本が話したら、話そうと思って…」


「その話に、俺は必要?」


陸人の笑いを含んだ問いに、気配で斎藤君が頷くのが伝わった。