(そんな事、私が1番分かってるよ)


強引に窓際に立たされ、私は前に立つ愛来のポニーテールの髪が揺れているのを眺めていた。


「美空…雪、見てみて。それで、心の中でお礼を言おう」


愛来の言葉を聞きながら、私はゆっくりと窓の外の景色を見つめた。


愛来が脇に退いたことではっきりと捉えることのできる雪景色。



校庭が、

木々が、

住宅が、

奥にそびえ立つ山が、

雪で覆われている。



「「おお…」」


いつの間にか横に並んだ男子2人が、感嘆の声を漏らす。


けれど私には、感嘆する余裕すらなかった。


雪がトラウマだから。


降り積もる雪を私の目が捉えた瞬間、私はあの日を思い出す。


真っ赤に染まる雪。


どんどん蘇る、美花の記憶。


『2人で1つだからね…』


『忘れないで、ずっと傍にいるから…』


『私は、大丈夫だから…』


『ありがとう、皆……』



美花の言葉が、

笑顔が、

泣き顔が、

全てが、

雪と重なる。



深い苦しみと悲しみが、またもや私の心を支配していく。


私の足は震え、充血した目からはまた新たに涙が流れる。


倒れそうになる自分を、必死に奮い立たせる。