「自分を責め続けるな、川本」


陸人の優しい言葉が、私の堅い心の扉を開ける鍵へと変化する。


「…川本の妹は、川本がこうなることを望んで助けたはずじゃないと思うよ」


ずっと無言だった斎藤君も口を開く。


「助けてもらったんだから、その命をもっと大切に使わないと!」


愛来が涙を流しながら、呆然としている私の肩を叩く。


皆の言葉は、瞬く間に、私を包む“嘘”という名の殻を壊す。


そして、私の氷のように冷たい心を、少しずつ溶かしていく。


「私…私、美花に何も言ってない…」


「今からでも遅くないんじゃないのか?」


陸人の隣に立った斎藤君がにこりと笑う。


「でも、どうすれば…」


私は目尻の涙を拭う。


「川本の中で、川本の妹の事を1番思い出すものはないか?」


陸人が提案する。


答えは、1つしかなかった。


「雪…」


私の呟きを聞き逃さなかった愛来が、いち早く立ち上がる。


「美空、雪を見よう!それで、心の中でお礼を言おう!…そしたら、美花にも伝わるよ」


愛来は私に有無を言わせずに、私を窓際まで引っ張って行った。


「おいっ、川本に雪見させたらやばいぞ!」


陸人がいつになく焦った声を出す。