「私っ…こんなに美空が苦しんでるなんて、気付けてあげられなくて…」


愛来はうずくまりながら、自分を責めるような言葉を口にする。


スクールバッグを肩にかけた陸人は、ドアに寄りかかるようにしてこちらを向いた。


ポケットに手を突っ込み、私達3人を交互に見つめる。


「…川本、約束破ったな」


その口からは、皮肉とも取れる言葉が発せられた。


「ごめん…」


謝る私を見て、陸人は笑っていた。


「川本が決心したんだから、平気だよ」


私は力強く頷いた。


「美空っ…私が、信じられなかったの…?私、てっきり美空が相談して来なかったから、もう平気なんだなって…安心、してたっ…」


私は首を振り、再び愛来を抱き締める。


「違うよ。愛来が信じられなかったんじゃなくて、怖かったの…」



これが、私の本音。


「隼人君にもこの前会って、少し相談してみたけど、結局は何も変わらなくて……」


愛来が突然顔を上げた。


「私…この前、お兄ちゃんにその事言われて…美空が私に相談しやすい様にしてたんだけど、気付かなかった…?」


「!」


『美空、このごろ悩んでない?』

『でも、悩んでたり困ったりしてたら言ってね!前みたいに話聞くからさ!』


最近愛来に言われた、気遣いの溢れ出た言葉が次々に思い出される。