私の胸に顔を埋めた愛来。


「愛来…」


愛来は、泣いていた。


「何で、泣いてるの……?」


そう聞きながら、私の目からも涙が溢れ出す。


斎藤君の目なんて、気にしていなかった。


「美空っ……私の事、そんな風に思ってたなんて…」


愛来は私よりも泣きじゃくりながら、私の肩に手を回し、力の限り抱きしめる。


「私が、迷惑に思った事、1度もないよっ……」


その言葉を聞き、私は固まる。


(私達の話、聞いてたの…?)


私はゆっくりと口を開く。


「愛来…どこから、私達の話を聞いてたの?」


愛来は顔を上げ、泣き笑いを浮かべた。


「斎藤が、雪を見たらどうなるのかって質問してた辺りから……」


(結構聞いてたんだ…)


私は恥ずかしくなる。


その時、ガラガラと後ろのドアが閉まる音が聞こえた。


愛来の顔越しに見ると、そこには何故か、陸人が立っていた。


いつもとは違い、何の感情も分からない顔つきをして。


私の驚いた顔を見て、陸人が口を開く。


「陸上部、早くに終わったから…斎藤と一緒に帰ろうと思ったんだけど、教室内、入れる雰囲気じゃなくてさ…」


「教室に忘れ物をしたから、取りに戻ったら陸人に会ってね、入るなって言われたのっ…」


愛来も続けて説明し、言いながら顔を手の中に埋めた。