必死に、笑顔を作った。


“楽しい”


“嬉しい”


全て、一生懸命感じようとした。


皆が笑っている時。


(これが、“楽しい”なんだ)


そう理解したつもりになって、笑顔を貼り付けた。



いつの間にか、私は嘘で成り立っていた。


「それから、雪を見れなくなった…あの時と、重なって…辛く、なるからっ…」


涙が、頬を伝う。


「食べ物の味も分からなくなって……楽しいとか、嬉しいとか、分からなくなって……笑えなくなった」


初めて暴露した、真実。


隼人君にも迷惑を掛けた、自分の話。


斎藤君は静かに私の話に耳を傾ける。


「だから、頑張って笑顔を作ってたんだけど……ばれちゃった」


私は自虐的に笑う。


「ずっと、周りに合わせるために笑ってたら…本当の笑い方、分かんなくなっちゃったよ…」



この話を、斎藤君はどんな気持ちで聞いているのだろうか。


きっと、経験したことがないだろう。


私だって、こんな苦しみは、二度と味わいたくない。


けれど、変われないのだから仕方が無い。



「雪を見たら、どうなるの?」


急に斎藤君がわたしに質問する。


「え…」


何て答えればいいのか分からなくて、私は戸惑う。