私は冷たい目をして口を開く。


「そんな事言ってないだろ!」


斎藤君が言い返す。


「分かってるよ。美花の方が、私よりも勇気があったから…」


「だから」


斎藤君が口を挟む。


「川本の妹は、川本が生きてて欲しかったから守ったんだ。違うか?」


私の思考回路が一瞬、停止する。


そして、動き出す。


「分かってるよ…だから、苦しいんじゃん…」


「分かってるんなら、何で?」



外から、陸上部の部活が終わる挨拶が聞こえてくる。


少ししか見なかったけれど、外はいつの間にか雪が降っているようだった。



「斎藤君が、私の身になってみれば分かるよ」


斎藤君はあからさまに首を傾げた。


意味が分からないようだ。


「…美花が死んでも守りたかった命は、今はちゃんと機能してないの」


「それって、どういう…?」


「…双子ってね、生まれた時から一緒だから、まるで2人で1つみたいなものなの」


美花が言ってくれた、あの言葉。


私は斎藤君の言葉を遮る。


「でもね、片割れが居なくなったら…苦しみしか、残らないの」



毎日、泣き叫ぶ日々。


明るい感情は凍結した。


誰の言葉も、私を前に向かせられなかった。