「“慰める”?…口先だけじゃないの?」


斎藤君は真顔で首を振る。


「そんな訳…。俺も、川本と同じだから、きっと共感できると思う」


(同じ?)


私は眉をひそめた。


私と何が同じだというのだろう。


もう、私には悲しみしか残っていないというのに。


「だから、話してくれないかな?…きっと、分かり合えるから」


斎藤君は教室に留まる気満々で、暖房のスイッチを付けた。


「嫌」


私は頑なに拒否をする。


斎藤君から折れて欲しかった。


「俺も川本と同じだから…。川本が言ってくれたら、俺も言うよ」


(別に頼んでないよ)


私が微動だにしないのを見て、斎藤君はため息をついた。


「なあ、信じてくれよ。…何で笑ってないのか、知りたいんだ」


私は先程と同じように、嫌、と言おうとして踏みとどまった。


この前、隼人君に相談した時、結局は何も変わらなかった。


そう。


言っても何も変わらないのなら、別に言っても良いのではないか?



そう考えると、決断は早かった。


「…分かった」


たった4文字の言葉を発するのに、時間は少ししかかからなかった。


その瞬間、斎藤君の顔がほころぶ。


「ありがとう」