私達は、しばらくそのままの体勢でいた。


「…気持ちが落ち着いたら、また書けばいいじゃない」


お母さんのその声で、沈黙が破られた。


私は頷く。


声を出したら、1度は結ばれた涙腺がまた切れそうだったから。


「じゃあ、おやすみ。…いい夢を見るのよ」


お母さんが優しく言い残し、外へ出ていく。


私はまた頷いた。



よくよく見ると、12月10日に美花が書いた日記の右ページは何も書かれていなかった。


あの日から、私は日記どころではなかったのだから仕方が無いと思う。


それに、日記を書く気分では無かった。


お母さんに言われたけれど、今はあまり乗り気ではない。



だけど。


それをすることによって自分が変われる第1歩になるのなら。


(また、書いてもいいかな)


そう、思った。



交換日記を本棚にしまい終わり、ふっと横を見ると美花の机が目に入った。


机の上には、美花が生前勉強に使っていたものが置かれている。


シャーペンや教科書等が整理整頓され、いつでも使えるように準備万端の用意がされている。


もう、使う日は来ないというのに。


そこに、今まで気付かなかったものが紛れているのに気が付いた。


机の端っこに、スノードームが置いてある。