「おはよう」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・おは、ぜぇ」
静月ちゃんは、けして待ったりしない。
タイミングが合えば、一緒に登校するけど、
家の前で待ったりとかはない。
以前、家のへいから隠れて見てたら、1歩も止まらずに歩いていったので、確実な情報だ。
「お茶、のむ?」
昨日、私を殴った水筒が渡される。
何気に友達想い。
静月ちゃんの、こーゆーところが、かーわいーんだよなー。
ごくごく、ぷはぁ。
生き返るー。
「ありがと。 今日もセンがイタズラしてて、もう、朝から大変だったんだから」
「そう。 よかったね」
「何ひとつ良くないよ!」
「そう? でも、嬉しそうだよ」
「う。 たしかに、嫌じゃあないけど。 私も普通に恋をしたいなぁ」
学校の下駄箱に入る。
私は靴紐を緩める。
「でも、橘、ふったんだよね」
「うぐ」
しゃがんだ私の背中に、静月ちゃんは、問いかける。
「橘、ショック受けてた」
「そ、それは、やっぱり、需要と供給がね」
なんだろう。
責められてないはずなのに、グサグサくる。
「というか、なんで知ってるの?」
「昨日、LINEで嘆いてた」
「え、二人ともLINEで繋がってるの!?」
「あ、個人じゃないよ。図書館のメンバーのグループ」
え、円卓の美男子とのグループLINEだとっ!?
「というか、静月ちゃん。LINEやってたの!?」
「え、普通やってるでしょ?」
「え、私、携帯持ってるの見たことないから、持ってない人だと」
「そんなわけないよ。 学校には校則違反になるから、ね?」
少し恥ずかしそうに首を傾ける、今年一番かわいい静月ちゃんのポーズを前にしながら、私は、すこぶるがく然としていた。
「なんで、いままでアドレス教えてくれなかったの!?」
「聞かれなかったから」
「んなっ!?」
一番グサッときた。