【完】今日から、お前は俺のモノ

80対55 でうちのチームがリードしたまま




ーーーーーーーー前半終了。





「……す、凄いね」
あのお喋りな美咲でさえ、試合中は黙って
ボールを目で追っていた。




「……でも相手チーム湊君出してないよね」

「……え?」


……うそっ!


「……めい気づかなかったの!?」

「……う、うん」




……私……うちのチームばっかみて……

相手チーム……見てなかった……


「それにしてもなんで湊君出てないんだろ」

「そう言われればそうだね……」



……確かに、湊君は4番キャプテンだし……


なんで出てないんだろ……




ピーーーッ



「只今より、桜流高校、
選手交代のお知らせをさせていただきます」



……選手交代?


もしかして……


「……選手変わって、




4番小日向 湊選手に交代です」



……やっぱり!!!



それから、





「うぉぉぉおお!!!!!!!」
「みなとくーん!!!!!」

多くの歓声で
体育館は一気に桜流高校のモードに包まれる





ピーーーッ!!!!

それと同時に審判の後半開始のホイッスルが





私の胸に強い予感を感じさせた。



後半開始10分。



第3ピリオドが終わる……。
(一試合が1ピリオド…10分の4セットで行われる)



点差は驚く事に

120 対 115……。



……後半開始してから点差が詰まってる…



これは……





ーー湊君が入って流れが大きく変わったから



湊君が入ってチームの指揮も上がって
会場全体が……



完全に桜流高校の雰囲気にのまれてる……
なにより……






湊君のドリブルの切り方に
玲於も涼太もついていけてない……!!!



唯一付いていけてるといえば颯太くらい……





颯太と同レベルの人がこんなに近くに
いるなんて……



嘘でしょ……




2分のインターバル(休憩)が終わる。

第4ピリオド……。




これがこの初戦の最後のピリオド……


初戦を落とせば、県で1番になることすら
難しくなる……





絶対……勝って……!!



颯太……



……大丈夫だよね……?
ピンクのリストバンドをつけた颯太、



赤いバスケシューズの湊君、



2人が同時にコートに入る。




ピーーーッ!!!!


うぉぉぉぉぉお!!!!!


会場の視線が一斉に試合に注がれる……!!



バシッ!!次々とどちらのチームも
譲らず点数を伸ばしていくーーー




……残り1分……!!!



点差はわずか2点のリード……。


しかも今は相手ボール……!!!



……まずい……っ





パスッ!!



滑らかに弧を描いたボールは
ネットにそのまま入る……
それは相手のゴール……





……っ!!湊君……!!
あんな場所からシュートするなんて……!!



142 対 143……!!



…………追いつかれた!!!!!



「うぉぉぉぉぉお!!!!!」
「……っこれはあの東海高校に勝てんじゃねーの!!!」

観客の声が特別席まで聞こえる。



颯太も、もう体力の限界で
明らかにスピードが落ちてる……



……っ!!残り30秒!!





ーーーーーこのまま負けるなんて嫌!!!!




玲於が相手チームのボールをカットして…






ーーーーーーー残り15秒。




……っ!!

玲於、あんなとこの颯太にパス!?!?



颯太はゴールの反対側……!!



あの位置からのシュートは難しい……!!









…………でも!!!まだ諦めたくない!!




ーーーーー残り5秒。




ーーーー颯太がシュートの体制に入る




「颯太!!!!絶対決めろぉぉお!!!」



気づいた時には私は叫んでいた。






パスッ…………






……は、入った…………?





ピーーーーーーッ!!!!!


試合終了のホイッスルが鳴り…
会場が静まって……




「…………うぉぉぉぉぉお!!!!!」
「何、今の!!!!!」





145 対 143……



「勝った!!!!!!」
美咲の大声が響く。




……勝ったんだ……!!!!!



気付いたら私は席から身を乗り出していた。



「めい!!!!!」

……コートから私の名前……?



コートに目を落とすと……



颯太!!!!


「勝ったぞ!!!!!」



……ちょっと颯太!?!?


こんな大勢の前で……!!!


相変わらず恥ずかしいことばっかり……






でも…………






「……颯太……



ありがとう!!!!!」




さっきまで恥ずかしいと思っていたのに
そんなの忘れて、






私も身を乗り出して叫んでいたんだ.*・゚

試合が終わって美咲と私は




颯太達の元へ向かう。



……ってここどこ……!?……


美咲!?……美咲もいないし……


また迷子……



「めい!」




「颯太……?




……じゃなくて湊君!?!?」




「あーあー颯太じゃなくてごめんね〜?」

「……っいや別にそういうことじゃ……」




この人いつもからかってくるんだから……





「……あ。めい叫んでたでしょ!!!」

「……へっ?」

「あのーえっとー……決めろ!みたいな?」




決めろ……?

私の記憶がバッと蘇る。




…………!!!!

「颯太!!!!絶対決めろぉぉお!!!」

……って!!!!!




「もしかして聞こえてた!?!?」



「ぷはっ!!!聞こえてたも何も…!!
あれ、今日1会場に響いてたし!!!」


そう言いながら大爆笑する湊君。



それにしても……


今日1に響いてたって……恥ずかしい………


「まぁ……それもっ……

めいの良さだよね……っははっ…
マジで思い出すだけで腹痛てぇ……っ……」


「っていつまで笑ってんのよ!!!」

ーーバシッと湊君の背中を叩く。


「……っ!!!いってっ!!!!
マジいてぇ……!!実はめいって怪力……」

「……怪力って……!!失礼な!!」

「ごめんって!!
お願いだから2発目は勘弁!!!」

「……もうっ!!

……そんなに痛かった?」


「……うん、めっちゃ」


そういながら肩を抑える湊君。


「ご、ごめんっ!!試合後なのに……」

「……なんてね?うっそ〜♪」




「……えっ?」

「ぷはっ……!!……めい単純すぎ!!」

「……っふはっ!!!」


私も湊君の笑顔につられて吹き出した


……なんかこの人といるとつい笑っちゃう



「あ、これ俺のメアドね」

「……え?」

手を見ると……メアドが書いてあった。

「ってことでまたね!めい!」

「えっ!?!」




湊君ってほんと嵐のような人……
……って私が探してるのは美咲と颯太!!



また美咲に心配かけちゃったよ……




ガシッ!




「え?」


「ねぇほんとどこ行こうとしてんの?」




ーーーーーー颯太?



「颯太ぁ!!」



颯太の手をぎゅっと握る。



「っえ?ええ!?」




それから颯太の顔が赤く染まる。




「だってずっと探して……」

「めい、方向音痴だもんな」

「そんなことっ!!」


全然あるけどね……





「で?俺にそんなに会いたかった?」

意地悪に颯太は笑う。




その笑顔に見つめられてつい
体温が上がる。



「っ!いや……っ……


かっ……っこよかっ…………た」




かっこいい1つの言葉に詰まって……



「ま、勝てたのもめいのおかげか」

「……え?わたし……?」

「最後のシュート……



あれ、めいのおかげだから」

「……!!もしかしてあれ聞こえ……」

「あたりめぇだろ……

でも、あれがなかったら入ってないし……」




……私のおかげ……?




颯太の、チームの役に立てた……?





それだけでなんか…




カァ……顔が熱いよ……っ





颯太を見上げると、


颯太も顔が真っ赤だった。


なんか……

「……っはは!!」

「……なんだよ」






「……私たち2人ともトマトだねっ!!」

「……っ!!トマトって……

っははっ!!!!」


颯太がおもわず吹き出す。


「……でしょ?」

「確かにな!」



その後、私は第2試合を見て



圧巻の160 対 79という数字で勝っちゃう



このチームのために何か一つでも




役に立てるならいいのに……





って考えちゃうんだ。
……はぁ……今日は疲れたぁ。





結局、家に帰ったのは、7時。
それからバタバタしてもう11時。




でも……颯太達はもっと疲れたよね…



私と話してからも今日の
ミーティングしてたもんね……





今にも消えそうな右手の
湊君のメールアドレスを
真っ白な紙に移し替える。




あぁ……




今すぐにでも寝たい……





プルルルルルルーーーーー

こんな時間に誰……





…………颯太ぁ!?!





「も、もしもし??」

「……もしもし?こんな遅くにごめんな」

「だ、大丈夫だよ〜……

それで、颯太どうしたの?」



……私、なんかしたっけ……




……なんだろ……




颯太の口から出た言葉はわたしの想像を
遥かに超えて……








「なぁめい、マネージャーにならねぇ?」



……だった。




………………マネージャー!?!?

ーーーーーーーーーーーーーーーーー




「……マネージャー!?!?」



「いや……あの後のミーティングで
全国大会に出るって考えたら、


マネージャーがいねぇと俺らだけじゃ
選手のケアとか難しいっつーか……」



「それで……私!?」



「お、おう。
……うちのチームの奴ら、
小学校から一緒の奴ばっかじゃん?





それで、皆めいのバスケの事も知ってて……
めいじゃなきゃ出来ねぇって聞かなくて…」




「そ……そんな私に…「でも俺は……めいが嫌なら全然断ってくれていいと思うし……」



颯太の優しい声が私の声を塞ぐ。





……颯太……





颯太はこんなに私の事考えてくれて……
それに、こんなに頑張ってるのに……



わたしといったら、





全然何も颯太の役に立ててない……







私、あの時……






少しでも役に立てたら……って





……役に立ちたいって思ったんだ……!!








だから、マネージャーやってみたい!!!




「やっぱ無…「やる!!頑張ってみる!!」



「…………え!?!?」





「……私、皆の……




颯太の少しでも……役に立ちたい!!!」






ーーーー私はそう決めたんだ!!!






「……ホントに大丈夫なのかよ……?」



颯太の優しい声が耳一杯に広がる。


……多分それはあの時の私を想って
言ってくれてるんだよね……



「うん。大丈夫!!」



「……そっか。」



「私、1度決めたら突き通すから!!!」




「……っ!おう!!じゃ、
明日から早速頼んだ!」



「りょーかい!



じゃ、おやすみ……」



「……おう。おやすみ……」





『……』





……なんかまだ颯太と話していたい……
……けど……





って電話切れてない……!!



こういう時って私から切るべきなの!?



わっかんないよ……!!











「…………なんかまだめいと話してぇ」



「……え?」






私と思ってることが……同じ……
電話越しなのに颯太の事で
頭がいっぱいで……









「って俺だけか!!おやすみな!!」
「……っえ?!?」






ツーツーツー……




切れたし……。




もうっ!颯太はホントに……











……って私、マネージャーになったのか……




明日から今よりもっと頑張らなきゃ……!!


あぁ…………


耳にめいの声の余韻が残る。




……っ俺まじでめいのこと好きすぎ……




って……





……明日からめいがマネージャーか……


あの時の俺にそんな事聞かせたら相当
驚くだろーなー……



生徒会選挙の時も、


今日のバスケだって……
あの時からあんなにバスケの存在自体を
避けてきたのに…………




めいは強くなったよホントに…



あーもう俺の助けとかいらなくなんのかな…

それはいいことなんだろーけど……




……なんか寂しい……


ってもう12時だし……っ
早く寝ないと……
「……颯太……!そ……う…た……」




ーーーーーーーめいの声?




夢なら……今すぐめいを抱いてもいいよな?


そのうっすら見える影の手を引き……




抱きしめ…………




パンッ!!!!




「……ちょっと颯太なにするのよ!!!」

「いって!!!めい、お前生きて……!」

「生きてって死んでないわよ馬鹿!!」

「そーいうことじゃ……」



バンッ!!





……夢じゃ無かったってか……




だからってあいつの平手打ちはガチで痛いんだからよぉ……



ーーっあ……夢だったらなあ……



って!もうこんな時間とかやっば!!!!



「いってきまーすっ!!」