【完】今日から、お前は俺のモノ

私、あの時、あの病院の病室で



暗くて、誰もいなくて、寂しくて、
1人で夜ずっと泣いてた……




そんな時……私に……






「大丈夫……?」






誰かの声が響いた。





「誰……?」




病室は2人で1部屋の部屋で……



私は自分のことで一杯で隣の人まで
気にしていなかったから……


誰か、どんな人かすら分からなくて、





「俺は…………あさひっつーんだ」




「あさひ……?」




「……うん……

そっちは……?」




「……私は……めいっていうの……」





「…………なんで泣いてるの?」







「それは…………事故にあって……
私の大好きなバスケができなくなって……
今、私は1人で…………」




「だから病院に…………」





「…………うん……あさひはどうして?」





「俺は…………サッカーで相手チームと
ぶつかって……ここんとこ三ヶ月は
ここにいる……」




「……!三ヶ月もここにいるの……?」




「……うん……だから……俺も
めいと同じだなって……」



私と同じ……

ずっと1人だと思ってたから……


心が軽くなって ーーーーーー






「じゃあ……めいとあさひはもう友達ね?
だからひとりじゃないってことだよね…?」




「……おう!そういう事だ!
だから、こうやって夜話そうぜ!」




「うんっ!話そう!
あさひがいるなら1人じゃないんだもんっ!」




そう言ってたわいない話をして眠りについた




でも次の日には、








隣の病室にはだれもいなかったーーーーーー





だから、あれは私を安心させるためのー



現実じゃないものだと……



ずっとそう思って ーーーーーー





ーーーーーーーーーーーーーーーー
でも、あの時の '' あさひ '' が


今、目の前に……



朝比奈 尚として……





「だから……俺、あの時……
めっちゃびっくりして」





だから…………





「あの時、俺はすげぇめいに救われて……

って覚えてないよな……」
そう言ってしたを俯く 尚 。





尚、
決して覚えてないわけじゃないの……!


むしろ……






「私の方がよっぽど救われたんだから!!」

気づけば、目からほんのり温かい涙が
私の頬を伝わり、


起き上がって

尚の手を強く強く握っていた。





「……覚えて……」

尚は驚いた顔をして……
その頬には涙がポロリと落ちていく……




でも……私はあの時、救われたと同時に
次の日、尚がいなくなって……





「覚えてるにきまってるじゃない!!
私があの時、あの一言でどんなに救われた事か……!!でも次の日にはいなかったじゃないっ……!」





「あれはっ!!」



「ど……し……て……」



2年越しの涙が溢れだす……











「次の日、俺は手術だったんだ……」





「え……?」








「だから……最後にこの子と……めいと
話しておきたいって……思って……」




……だからいなかったの……



……私……馬鹿だ……




1人で戦ってると思って……
尚の言葉を信じられなくて……







「じゃあ……尚も戦ってたんだね……っ…」



「おう……めいのおかげで……
頑張れた……っつーか」



「そんなの……私だって……そーだよっ…」





二人で想い合った事を
2年越しに伝えていく…… 。










「だから……一目惚れだったんだ」




「……え?」
一目惚れ……?


「高校に入って、サッカーばっかりに夢中で今出来る事がどれだけ幸せかって……

あの子もがんばってるからって……
気づけばめいが心のどこかにいて……」





尚は一つ一つの言葉を噛み締めるように
口に出して大切そうに言うから……


私……





「だから……生徒総会でのスピーチを聞いて……感動して……見つけたって……」


「でも覚えてないよなって……
話しかけれなくて……でも
……それでも…って……

だからこのチャンスを逃したくねぇんだ」




尚は真っ直ぐ私を見つめて……












「めいがずっとずっと好きだった」
ーーーーーーーーーーーーーーーー



「めいがずっとずっと好きだった」




俺がずっと伝えたかった気持ち……



でもな……今、めいが
俺以外の他のやつの事で





苦しんで辛くてどうすればいいのか
わからなくて、






そこ気持ちがなんなのかも
わかっていないのも……





俺には全部、全部わかんだよ……




だから、俺は……
少しでもめいの役に立ちてぇから……





この気持ちがうまくいかなくても、
めいが幸せって思えるよーに……



少しでも手伝いたいんだよ……!!






「わ、私……」


めいは目をうるうるとさせながら……



「分かってる……颯太だろ……?
俺に全部……話せる……?」




そう放つと、一瞬めいは目を見開かせて





ゆっくり、1つ1つ、
今の気持ちを俺に伝える……






「わたし……今この気持ちが……
一体なんなのか……分からないよ……

苦しくて……辛くて……」





ほんとはこの気持ちを
めいに伝えてしまうと……


俺が1番に後悔するかもしれねぇし……

ほんとは言いたくねぇけど……






めいに1番に幸せになってほしいから……




「それは……恋だよ」



「……恋……?」




「誰にも渡したくねぇって……
その人の全部が好きで頭から
離れねぇ……の……それは






……恋だ」







「めいは颯太が好きなんだよ」






「私……今颯太に恋して……っ?!」





めいは多分この調子だから

颯太からの気持ちも気づいてねぇし……






「まじで天然だな……」


これは颯太も大変だったな……




ってもう七時かよ……っ
そろそろ帰んねーと弟が……






「めい、俺そろそろ帰…「あ、ありがと!」




…………っ!!

めいは両手で赤い顔を覆って、
帰ろうとする俺の手を掴んで

お礼なんて言うもんだから……



理性なんて吹き飛びそうだわ……




「おう!応援してるからな!頑張れよ!」




そう言って、俺はめいの家を出た。
わ、私……今……








『 恋 』







してるんだ……






なんだろう……




今の颯太との事を考えると

胸がきゅぅって締め付けられて



苦しくて……でも……



あの笑顔も、声も、寝顔も、


全部、全部、




私だけに見せて欲しいって




思っちゃうから……






欲張りなんだ……
この気持ちを真っ直ぐに颯太に





伝えたい……




でも……




今……目の前で颯太にこの気持ちを



ちゃんと伝えられる自信が無い……





それに……




颯太が私の事を
幼馴染としてしか見てなかったら……







今の関係が壊れてしまうの?





今この気持ちを伝えてしまえば……



私達は今までとは……違う……





それは……凄く……





怖い 。






ピコン……ッ!






静かな部屋にメールの音が響き渡る。



……誰だろ……



携帯を覗くと同時に私は、
はっと大事な約束を思い出す。





……美咲っ!!!
今日、カフェに行こうって約束したのに……
私……美咲にも迷惑……かけて……





急いでメールを打とうとすると、
携帯には一件のメールが届いていた。





件名は……
『明日じっくり聞かせてもらうからね』




誰……こんなの送ってくるの……っ……





宛名は………………美咲!?!!!!!





な、なにを……?なにを聞かれるの!?

って今日の事だよね?……





何から話そう……
今日は色々ありすぎだよ……





早速、美咲からのメールを開くと


『めい大丈夫!?
今日、朝から具合悪そうだったから
ずっと心配してたんだから?!!!

もっと頼っていいんだよ?|?'-'?)?』




……美咲っ……
やっぱり美咲には勝てないや……っ…


隠し事なんて通用しないなあ……




明日、長くなっても1から話さないとね…!





……あれ?……




まだ続きが…………!!!!!!





『今日お見舞いに行こうと思ったんだけど…尚が行くって言ったからさ??

私行かなかったよ!???(???*)

あっれ?!?いつの間にか尚と
仲良くなっちゃって!!
なに??!もしかして …… ?

明日じっくり聞かせてもらうよ?!』






携帯画面をスクロールした先には、
美咲の件名の意味がしっかり分かる内容が
みっちりと書いてあった。




「じっくり……って……」





……これは明日こそカフェで質問攻めかぁ



でも……
尚と美咲って繋がりあったんだ……



私も、美咲について知らない事……
まだあるのか……



こんなに近くにいるのに……





じゃあ……



颯太の知らない事も
もっといっぱいあるって事だよね 、、





…………もっと知りたいなぁ
そんなことをダラダラ考えていると
あっという間に朝。





こんなにも1日1日が過ぎていくのに、、






私はずっと止まったままなのかな、








「……め……めい!!!」


「……は…い「なにぼけっーとしてるの!」




振り向くと同時に手を引かれてよろける。




そこには







美咲がいた。






「ちょっと!前見て歩いて!!危ないっ!
今、自転車が!!ひかれそうになってたんだから……!!」


「……え……?」



美咲は顔を強ばって真剣に私に強く言う。





「えって……!
もぉう!!!!行くよ!!」





美咲は私の手を引くと
学校とは反対の方向に手を引いて
引かれながら歩いてカフェへと入った。
行き着いた先は、、


『Cafe Docile』


私達行きつけのカフェだ。

確か、
ここの店長の事を美咲は好きで……








「私、店長の事好きだったけど、けど……





美咲を見上げるタイミングと共に
美咲から震えた声が聞こえる。





……店長…… 結婚してたの」




私に背を向けて話すけど、
背中越しに震えが伝わる。





「……美咲 」




美咲……辛かったよね……
また1人で苦しんで、抱えて、







「美咲の馬鹿っ!!!
相談してよっっ!!!!!」





私は美咲を後からギュッと抱きしめた。





「……うん、ごめんね……ごめんね……
めいごめんね……


でもね…………」





美咲は私の方を振り向いて、
私の手を握りながら





「めいだって……
私を、私をもっと頼ってよっ!!
ずっと……ずっと一緒にいて……
1番、1番めいの事知ってるんだからっ!!」






美咲は泣きながら、
弱くて今にも壊れそうな心で、

でも強い眼差しで私に
伝えた。





その想いは私の心に刺さって 。



美咲はこんなに私のそばにいてくれるのに…

私はどうして……こんなにも

美咲を傷つけて……苦しめて…………



頬に暖かいものがつたって……





「……美咲っ……私こそ……ごめ……」





カランッ……




「あら……?そこにいるのは……


確か……



……美咲ちゃんと……めいちゃん?」

そこに立っていたのは

Docileの可愛い店員さん、


里奈子さん だった 。





「……!!
2人とも何してるかと思えば、
泣いてるじゃないっ!!
ほら、入って!」




里奈子さんは手招きして
私達2人をお店の中に入れると、
暖かいココアを出してくれた。





そこには、店長の姿は無くて、
里奈子さんともう1人の店員さんしか
いなかった。






一通り私たちの話を聞いた
里奈子さんは少し笑って 。





「なぁに?仲良いわね〜ほんとに〜
2人とも、お互いが大切だから
相談することもためらっちゃうのね〜」





里奈子さんはそう言いながら、
私達の隣の椅子に座って、





「じゃあ、今日はこんな時間だし
学校始まってるだろうから、
サボっちゃえ!!
それでいっぱい話な!!

あ、私も混ぜてよ?!」




そう言ってケラケラ笑う里奈子さんに
つられて私達も思わず笑ってしまう。








「それで??
美咲ちゃんは店長の事好きだったよね?」




あまりにも唐突な質問に私も美咲も
思わず固まってしまう。




「……えっ…えっと……
そ、そのことはなんで……っ……」



美咲は、はにかみながら聞く 。




「え〜 2人が来たその日に感じたよ〜?
でも店長結婚してるもんね〜
好きになるのもわかんない事もないけどね…

でも!
美咲ちゃんならもっといい人
いるから大丈夫よ!!

だってこんなにめいちゃんのこと考えて
悩んでくれてるいい子だもの!」




里奈子さんはそう言うと、
ニコッと笑って美咲の方をそっと叩いた。







「それで?問題はめいちゃんよね?」


里奈子さんの切り替えの速さには
驚いてしまう。





「……私は……」





美咲も、里奈子さんにも見つめられながら
私は一つ一つ、颯太への想いを
伝えていく。





颯太へのやきもち、
颯太を独り占めしたいって、
心が颯太でいっぱいになる、
颯太へのこの気持ちが本当に



恋であるのかを確かめながら




ゆっくりと言うことで



気持ちが楽になっていくのが


分かるんだ。