「ごめんねアズサ。あたしなにも覚えてない」


「……ううん、もういいよ」


あたしはそう言い、ほほ笑んだ。


もういいよ。


もう終わったんだ。


おつねはもうここには埋まっていないのだから。


それに、あの男性が入っていた通り、沙和もまた被害者の1人だったんだろう。


だから、すべてが終ると同時におつねに関する記憶がすべて消えてしまったのだ。


あたしは沙和の手を握りしめた。


沙和はほほ笑み握り返してきてくれる。


1度失ったと思っていた友達が戻って来たんだ。


嬉しさで胸の奥が暖かくなる。


「車を持ってくるから、ここで待っててくれ。君はまだ無理をしない方がいいだろう」


春子のお父さんがそう言って、1人で校門を抜けていく。