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文化祭当日。

「おはよう、みんな。今日は頑張りましょうね!」

瞳先生が言った。

京くんも体調が良いみたいだし、大輔くんも寝坊せずに学校へ来た。

「日奈子ちゃん、ちょっといいかな……?」

澄春くんが言った。

「どうしたの?」

「話があるから、体育館裏に来て。」

言われた通りに、私は澄春くんと一緒に体育館裏へ向かった。

文化祭だけど、体育館裏は、さすがに全く人気がなかった。

体育館裏に着くと、澄春くんは立ち止まった。

「日奈子ちゃん……。」

な、何だろう……、顔が赤い……?

「澄春くん、顔赤いけど大丈夫?」

体調が悪いなら、保健室にいた方良かったんじゃ……?

「顔が赤いのは、緊張してるせい。」

緊張……??

「あのさ、こんな所で、しかも今言うことじゃないって分かってるんだけどさ……、」

どうしたんだろう??

「僕……、日奈子ちゃんのことが好き。」

……!?

!?!?!?

「えっ……!と……。」

頭が働かない。

え、何……?

私、澄春くんから告白されたの……!?!?

「ごめん。困るよね!急に言われても……!」

え、えっと……!

「い、良いんだ。日奈子ちゃんは颯磨くんのことが好きだって分かってるから。だから、これは僕が勝手にしたことであって、日奈子ちゃんにどうして欲しいとか、そういうことじゃないから……。」

ど、どうしよう……!?

何て言えば……!?

「い、いつから……?」

「前に、僕のこと、凄いって言ってくれたよね。」

確かにそんなことがあった。

『私からみたら、澄春くんだって凄い よ!全国模試、市内2位だって簡単に取れるものじゃないし、顔だって格好良いでしょ!?』

って。

「初めてだったんだ。真面目にそんなこと言ってくれる人。」

嘘……。

澄春くんは何でもできるから、今までにだって、そういうこと、何回も言われたことがあるはずなのに……。

「だから……、あの、今日の『恋人迷路』の時だけでいい。僕の恋人になってくれませんか?」

全身がみるみる熱くなる。

「私こそ、私なんかで良いの……?」

「良いよ。日奈子ちゃんがいい。日奈子ちゃんじゃなきゃ駄目だよ。」

そんなこと……、言ってくれるなんて……。

私のこと、身長が低いって、馬鹿にしないの……?

私のこと好きになってくれるの……?

よくみたら、澄春くんはやっぱり颯磨くんに少し似ている。

格好良くて、頭が良くて、優しくて……、おまけに、澄春くんは私のことも好きになってくれるなんて……。

これ以上の幸せは無いよ。

ねえ、澄春くんじゃ駄目なのかな……?

澄春くんでもいいかな……?

颯磨くんを完全に諦めて、澄春くんでも……。