20
「おはようございます。」
次の週、保健室へ行くと、大輔くんと京くんと瞳先生がいて。
でもなんか、いつもと違くて…。
なんか、雰囲気が暗い。
「颯磨くん、休みですか……?」
いつもは一番乗りで来ているはずの颯磨くんがいないことに気がついた。
「あいつ、ここを出ていった。」
大輔くんが言う。
えっ……?
ここを出ていったってどういうこと?
え、嫌だよ、それってまさか……!
「クラスに戻ったの。」
瞳先生が代弁する。
「強制じゃなくて、自分の意思でね。」
そ、そんな……。
嘘……。
嘘だよ!
「それって……えっ……大丈夫なの……?」
颯磨くん、クラスでいじめられてたって……。
「大丈夫みたいだよ。」
京くんが答えて、大輔くんが続ける。
「颯磨をいじめてたのってさ、ほとんど女子なんだ。だから、女子に好かれたってことは、もういじめは終わったんだよ。」
そ、そっか……。
「良かったね。クラスに戻ることができて。」
「うん。これで良かったんだよな。そっちが普通だもんな。うん。」
大輔くんもそう言いながら、いつもより気持ちが沈んでいるように見えた。
その時、女子の沢山の声が、外から聞こえてきた。
窓から外を見ると、あるクラスが体育の授業をするらしい。
男女混合だ。
「あ、颯磨くん……!」
すぐに颯磨くんを見つけた。
それは、好きだからではなくて、沢山の女子に囲まれていたから。
思わず窓を開ける。
「颯磨様〜、2人組私と組も〜う?」
「や〜だ〜、あたしと組むの〜!」
1人が颯磨くんの腕に自分の腕を絡める。
ズキンッ
な、何これ……。
何か凄く……嫌な気持ち……。
颯磨くんは、幸せになったはずなのに……。
なんか、遠くに行っちゃった気がして……。
「くっそー!なんだよあいつー!急にモテやがってー!俺の立場、奪いやがってー!」
大輔くんが、窓から乗り出す。
すると、数人の女子がすぐに寄ってきた。
「キャー!大輔様だわ〜!」
颯磨くんの隣にいた子も、何人か大輔くんの方へ向かってきた。
「颯磨〜!!」
大輔くんが叫ぶ。
「俺にモテ度で勝とうったって、100年早いんだからな〜!!」
颯磨くんが、苦笑いをしている。
でもそれは、私の知っている颯磨くんの笑い方だった。
「キャー!王子同士、仲が良いのね〜!」
「絵になる〜!」
颯磨くんが、保健室の窓に寄る。
どうしよう……!
なんでこんなにドキドキするの……!?
「バーカ、別にお前に勝とうなんて思ってねーよ。」
「きゃー!颯磨様クール!!」
い、いちいちうるさい……。
「でも、女子を追っ払う方法だったら、大輔から学んだよ。」
颯磨くん、それ、ここで言う……!?
「この前のは俺の真似になってねーかんな!」
「大丈夫。今度は上手くやる。見てて。」
そう言うと、颯磨くんは、クラスの女子の方を向いた。
「キャー!こっち見たわ〜!」
「格好良い〜!」
「付き合って〜!」
「ごめんね、みんな。」
颯磨くんが口を開く。
「僕、好きな子にしか、興味ないから。」
え、えーっと……、なんか少し違うような……。
「キャー!一途なのね〜!格好良い〜!!」
しかもあんまり効果ない……。
「えー、颯磨様、好きな子って誰〜??」
その瞬間、颯磨くんと目が合った。
ドクンッ
颯磨くんの表情が、少し崩れる。
えっ……、何か、悲しそう……?
どうしてそんな顔するの……?
なんで……?
嫌だ、そんな顔見たくないよ。
「ねぇ、みんな!そろそろ授業に戻った方が良いんじゃない?」
私を見て、悲しそうな顔をした。
だったらもう、颯磨くんの記憶から、私を消さないと……。
だから言った。
「何あいつ。誰だよ。」
すぐに他の女子から反発される。
あ……、逆効果だったかも……。
「お前こそ、教室戻ればー?サボり。」
「ってかこいつ、チビじゃね?」
っ………………。
今まで充実しすぎていて、身長のことなんて忘れていた。
何か、急に現実に引き戻されたようだ……。
「あれだよ、健吾くんと身長が原因で別れた奴。」
「あー、あの子かー。」
「実際見ると、かなりチビなん……」
「やめろ……。」
えっ……?
「そ、颯磨様……?」
颯磨……くん?
「そういう悪口、やめろって言ってるんだ。」
「え……、別に悪口じゃ……!」
「悪口だろ、何処からどう聞いても。」
みんなが黙る。
「人を傷つけるのって、そんなに楽しい?僕のことだって、昔傷つけたよね?覚えてるだろ?」
みんなの顔が引きつる。
「そ、それは……!」
「ほら、またすぐに言い訳。」
「ご、ごめんなさい……。」
「許して、颯磨様……。」
「私も悪かったと思ってます……。」
「違う。」
颯磨くんが続ける。
「謝る相手が違うだろ。先ずは日奈子に謝れ。」
颯磨くん……。
いいよ、そんなこと……。
私はただ、颯磨くんの悲しそうな顔……、見たくないだけ……。
「早く謝れ!」
こんな颯磨くん、初めて見た……。
なんて言うか……、
こんな顔もするんだ……。
「ご、ごめんなさい……。」
1人が謝って、次々にみんなに謝られる。
「そ、そんな……、私こそ、ウザイこと言っちゃってごめんね……。」
私は謝る。
全部全部……、私のせいだ……。
「日奈子は悪くないよ。ごめん、僕のせいで。」
何だろう……。
どうしよう……。
このままだったら、泣いてしまいそうだ……。
酷いことを言われて悲しいんじゃない。
じゃあ、どうして……?
「ううん、大丈夫。じゃあね!」
私は急いで颯磨くんから離れ、ベッドに潜り込んだ。
やっぱり……、颯磨くんからは離れよう。
もう、おしまいだ。
いつかは終わるって分かってた。
私は幸せになってはいけない人……。
いるだけでみんなに迷惑がかかるんだ……。
せっかく颯磨くんがクラスに戻れたのに……、私のせいで颯磨くんをまた孤立させてしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。
だったら離れるよ……。
もう、関わらないから。
今までごめんね。
ありがとう颯磨くん。
そして、さよなら……。
「おはようございます。」
次の週、保健室へ行くと、大輔くんと京くんと瞳先生がいて。
でもなんか、いつもと違くて…。
なんか、雰囲気が暗い。
「颯磨くん、休みですか……?」
いつもは一番乗りで来ているはずの颯磨くんがいないことに気がついた。
「あいつ、ここを出ていった。」
大輔くんが言う。
えっ……?
ここを出ていったってどういうこと?
え、嫌だよ、それってまさか……!
「クラスに戻ったの。」
瞳先生が代弁する。
「強制じゃなくて、自分の意思でね。」
そ、そんな……。
嘘……。
嘘だよ!
「それって……えっ……大丈夫なの……?」
颯磨くん、クラスでいじめられてたって……。
「大丈夫みたいだよ。」
京くんが答えて、大輔くんが続ける。
「颯磨をいじめてたのってさ、ほとんど女子なんだ。だから、女子に好かれたってことは、もういじめは終わったんだよ。」
そ、そっか……。
「良かったね。クラスに戻ることができて。」
「うん。これで良かったんだよな。そっちが普通だもんな。うん。」
大輔くんもそう言いながら、いつもより気持ちが沈んでいるように見えた。
その時、女子の沢山の声が、外から聞こえてきた。
窓から外を見ると、あるクラスが体育の授業をするらしい。
男女混合だ。
「あ、颯磨くん……!」
すぐに颯磨くんを見つけた。
それは、好きだからではなくて、沢山の女子に囲まれていたから。
思わず窓を開ける。
「颯磨様〜、2人組私と組も〜う?」
「や〜だ〜、あたしと組むの〜!」
1人が颯磨くんの腕に自分の腕を絡める。
ズキンッ
な、何これ……。
何か凄く……嫌な気持ち……。
颯磨くんは、幸せになったはずなのに……。
なんか、遠くに行っちゃった気がして……。
「くっそー!なんだよあいつー!急にモテやがってー!俺の立場、奪いやがってー!」
大輔くんが、窓から乗り出す。
すると、数人の女子がすぐに寄ってきた。
「キャー!大輔様だわ〜!」
颯磨くんの隣にいた子も、何人か大輔くんの方へ向かってきた。
「颯磨〜!!」
大輔くんが叫ぶ。
「俺にモテ度で勝とうったって、100年早いんだからな〜!!」
颯磨くんが、苦笑いをしている。
でもそれは、私の知っている颯磨くんの笑い方だった。
「キャー!王子同士、仲が良いのね〜!」
「絵になる〜!」
颯磨くんが、保健室の窓に寄る。
どうしよう……!
なんでこんなにドキドキするの……!?
「バーカ、別にお前に勝とうなんて思ってねーよ。」
「きゃー!颯磨様クール!!」
い、いちいちうるさい……。
「でも、女子を追っ払う方法だったら、大輔から学んだよ。」
颯磨くん、それ、ここで言う……!?
「この前のは俺の真似になってねーかんな!」
「大丈夫。今度は上手くやる。見てて。」
そう言うと、颯磨くんは、クラスの女子の方を向いた。
「キャー!こっち見たわ〜!」
「格好良い〜!」
「付き合って〜!」
「ごめんね、みんな。」
颯磨くんが口を開く。
「僕、好きな子にしか、興味ないから。」
え、えーっと……、なんか少し違うような……。
「キャー!一途なのね〜!格好良い〜!!」
しかもあんまり効果ない……。
「えー、颯磨様、好きな子って誰〜??」
その瞬間、颯磨くんと目が合った。
ドクンッ
颯磨くんの表情が、少し崩れる。
えっ……、何か、悲しそう……?
どうしてそんな顔するの……?
なんで……?
嫌だ、そんな顔見たくないよ。
「ねぇ、みんな!そろそろ授業に戻った方が良いんじゃない?」
私を見て、悲しそうな顔をした。
だったらもう、颯磨くんの記憶から、私を消さないと……。
だから言った。
「何あいつ。誰だよ。」
すぐに他の女子から反発される。
あ……、逆効果だったかも……。
「お前こそ、教室戻ればー?サボり。」
「ってかこいつ、チビじゃね?」
っ………………。
今まで充実しすぎていて、身長のことなんて忘れていた。
何か、急に現実に引き戻されたようだ……。
「あれだよ、健吾くんと身長が原因で別れた奴。」
「あー、あの子かー。」
「実際見ると、かなりチビなん……」
「やめろ……。」
えっ……?
「そ、颯磨様……?」
颯磨……くん?
「そういう悪口、やめろって言ってるんだ。」
「え……、別に悪口じゃ……!」
「悪口だろ、何処からどう聞いても。」
みんなが黙る。
「人を傷つけるのって、そんなに楽しい?僕のことだって、昔傷つけたよね?覚えてるだろ?」
みんなの顔が引きつる。
「そ、それは……!」
「ほら、またすぐに言い訳。」
「ご、ごめんなさい……。」
「許して、颯磨様……。」
「私も悪かったと思ってます……。」
「違う。」
颯磨くんが続ける。
「謝る相手が違うだろ。先ずは日奈子に謝れ。」
颯磨くん……。
いいよ、そんなこと……。
私はただ、颯磨くんの悲しそうな顔……、見たくないだけ……。
「早く謝れ!」
こんな颯磨くん、初めて見た……。
なんて言うか……、
こんな顔もするんだ……。
「ご、ごめんなさい……。」
1人が謝って、次々にみんなに謝られる。
「そ、そんな……、私こそ、ウザイこと言っちゃってごめんね……。」
私は謝る。
全部全部……、私のせいだ……。
「日奈子は悪くないよ。ごめん、僕のせいで。」
何だろう……。
どうしよう……。
このままだったら、泣いてしまいそうだ……。
酷いことを言われて悲しいんじゃない。
じゃあ、どうして……?
「ううん、大丈夫。じゃあね!」
私は急いで颯磨くんから離れ、ベッドに潜り込んだ。
やっぱり……、颯磨くんからは離れよう。
もう、おしまいだ。
いつかは終わるって分かってた。
私は幸せになってはいけない人……。
いるだけでみんなに迷惑がかかるんだ……。
せっかく颯磨くんがクラスに戻れたのに……、私のせいで颯磨くんをまた孤立させてしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。
だったら離れるよ……。
もう、関わらないから。
今までごめんね。
ありがとう颯磨くん。
そして、さよなら……。