「……逢田くん。少しは自重しようとか思わないの?」


視線の主は今にも飛びかかってきそうな形相でこっちを見ていた。


「え?…あ、凪」


「お、おう、…柑菜」


「…………逢田くん」


「そんな目で見るんじゃねぇ!」


こんなにあからさまなのに、どうして佐城さんは気づかないのかな……。


佐城さんに対する彼の豹変ぶりに、俺は思わず佐城さんの鈍感さを案じてしまう。


「あ、私スタンバイしないと」


そう言って構えた佐城さんに前の走者がバトンを渡すと、彼女は一気にスピードを出して走り出して行った。