「雪、茜ちゃんのこと大切にね」
「言われなくてもそのつもり」
「あ、そう…ふふ、なんか雪、変わったね。良い方に」
「そうか?まぁでもそうだとしたら、茜のおかげだと思うよ」

交わされる2人の会話に思わず顔が熱くなり、胸が締め付けられる。

「お幸せに」
「…ありがと。そっちも幸せにね、雪」

走り去る里香さんを乗せた車を、雪さんの隣で見送っていく。
あったかくて、幸せな気持ちを心いっぱいに感じながら。

「俺たちも行こうか」
「はい」

あれから水野編集長を送ると言ってくれた美月ちゃんがよろよろと歩いていくのを見かねた槙くんが、渋々といった様子を醸し出しながら2人の後を追いかけて行った。

「美月ちゃんたち大丈夫ですかね…」
「案外いいコンビなんじゃないかな」
「え?」
「いや、なんでもない」

雪さんの声がよく聞こえなくて聞き返したけれど、彼はくすっと口元に手を当てて笑うだけだった。

まぁでもなんだかんだ言って、心配して付いていってくれたんだろうな…
そんなことを考えながら乗り込んだタクシーで、雪さんが初めに告げた行き先は私の自宅マンションだった。