「誰が王子様だって!」

と大きな声が病室内に響いた。

「遅かったか.....」

いやな予感はいていたんだ......

「やっぱお前は王子なんだな」

「よかったね、王子様」

「すてきだね、王子様だなんて ~」

「お疲れ王子」

とみんな俺をからいながら次々に彼の肩をたたいた。

もうやめてくれ。

これ以上は勘弁してくれ......

しかしその願いは叶わなかった。

「ああ、言ってなかったな。こいつ、学校では王子って呼ばれてんだっ!なっ!」

と大輝が俺の背中をたたいた。

あっ......言われてしまった。

またからかわれるのは目に見えていた。

「だから私たちなんだか嬉しかったの」

「どうして?」

嬉しい?

「白雪姫と王子様なんて、本当にすてきなお話でしょ」


みんながそんなことを思っていたなんて知らなかった。

「何がすてきなお話なの?」

といきなり良子とつぼみが入ってきた。

「ああ、柊馬が王子って呼ばれてたって話だ」

これ以上は話を広めないでくれ

俺はそう言おうとした。

しかし遅かった。

「白雪姫と王子様ってことか!」

「すご ~い!」

「じゃあこれからは王子って呼べばいいのね!」

と2人は興奮している。

まったく......

すると

「あら、みんなお揃いで何を楽しそうに話しているの?」

と看護師の明子さんが入ってきた。

「明子さん!この2人は本当に白雪姫と王子様だったって話をしてたの!」

つぼみの言葉に明子さんは嬉しそうにこちらにやって来ると

「そしたらこれからは柊馬くんのことを王子様って呼ばなきゃね」

と俺たちを茶化すように明子さんは笑った。

「はい!」とみんなの声がそろう。

「これだから王子っていうあだ名は嫌だったんだ」

さらにたくさんの人に王子と呼ばれると考えるだけでため息が出てしまう。

「柊馬」

隣に座っている結姫が小さな声で俺の名前を呼んだ。

「ん?」

はなぜか彼女は少し寂しそうに見えた。

どうしたのだろうか。

「もし柊馬が王子って呼ばれてなかったら私たちがこんな風に出会えてなかったかもよ?」

結姫の言葉には驚いた。

しかしその言葉が嬉しかった。

俺たちは運命なのだと言われているようで。

「そうだな」

「そうだぞ!俺たちが王子って読んでたからお前たちは運命の出会いができたんだ!」

と大輝が大きな声で自慢げに言った。

一番聞かれたくない人に聞かれてしまったようだ。

みんなも

「そうだそうだ!」や「感謝しなよ!」

なんて調子のいいようなことばかり言い始める。

「はあ」

結姫とため息がそろった。

2人で笑い合う。